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東京都23区の下町に位置する、豊かな植栽の庭に恵まれた家のリフォーム計画です。。
敷地内には「築80年の母屋」、「築12年の増築された平屋」、「築3年の6畳の離れ」と無計画な建物が広がっていました。
母屋とは別にある、「平屋」と「6畳の離れ」がクライアントである娘夫婦の住まいです。
夫婦2人と先天的に目に障害(全盲ではなく色の濃淡は認識)を持つ子供1人の家族構成です。

「視覚障害を持つ男の子のために」
息子の治療に奔走してきたが、症状も落ち着いたので、今後はこの障害とどう立ち向かうかのフェーズとなりました。
現状の息子さんの情報をいただき、実際にお会いして、
・どのような空間がリハビリにふさわしいのか?
・床に寝ていることの多いこの子に、どんな床や壁の素材がいいのか?
建築家として、この子の為にどんな提案ができるのかを問われました。
「雑誌とカフェが好きな奥様のご希望」
・キッチンの配置に工夫をし、常に子供の動きが視野に入る事を可能にして欲しい。
・お菓子が焼けて、お茶をして、雑誌の読める空間にしたい。キッチンはガスコンペックを搭載した白い天板のキッチンに!
・旦那様の居場所としてロフトが欲しい。
・長年に渡って蓄積された無秩序な建物をどうにかしたい。
- ・家の中でリハビリを!
- ・自然素材で固めて欲しい。
- ・カフェの様な空間に。
- ・子供の動きをキッチンから把握出来る様に。
- ・白い天板のキッチン。
- ・旦那様の居場所としてロフトが欲しい。
盲学校の見学
まずは息子さんの通う盲学校を見学することで、視覚障害者の理解を深める事に努めました。
びっくりしたのは「バリアフリー」がまるでなっていないこと。お話しをお伺いすると、あえて“バリア(障害)”を設置しているそうです。バリアのある空間で過ごす日常は、結果、視覚障害者の行動範囲を広げることになるとの事です。
安全面を損ねる“バリア”は論外ですが、それ以外のバリアを仕掛ける設計を試みました。
たとえば、玄関入口はスロープ(坂)に、という話しも出ましたが結果的には段差のある玄関としました。これが高齢者向けのバリアフリーリフォームであれば、スロープを採用することになりますが、お子様のこれからの長い人生、必ず社会復帰が必要となります。それを考えるが故の「社会復帰」に向けたバリアの設置のと言えます。
キッチン計画の重要性
今回のリフォーム計画において「キッチン」は、“奥様のこだわりを実現”と“子供の行動把握”という2つの側面を持ちます。特に“子供の行動把握”という視点を無視してしまうと、キッチン環境をいくら充実しても、子供の行動把握が出来ないと、「家事に集中出来ない」という本末転倒な結果を招いてしまう事になりかねないので、キッチンからの目線には気を使いました。
バリアが成長を促す!
「木の柔らかさは遊んで良し!」「タイルの冷たさは立ち入り禁止」「畳の感触は寝るところ」と様々なサインを設けました。その他にも「部屋毎で異なる天井の高さ」、「壁の色と区別した、赤い手すり、黒い手すり」「」などなど随所に“バリア”を設ける事で、子供の成長を促せる空間としました。
安全な自然素材へのこだわり
特に子供が直接手にするところの建材の選定は気をつけました。例えば、「無垢のフローリング」「珪藻土」といった王道的なものから「リノリウム(床材)」「蜜蝋のワックス」といったちょっと聞き慣れないものも活用して、各部屋の床に“違い”を見出し、子供のための地図の役割を持たせました。
キッチンからの目線
前述のとおり、キッチンから左に視線を向ければ子供の動きが把握できます。それに加えて豊かな植栽を持つ庭が視線の正面に広がる様に計画し、四季の移ろいが身体全体で感じられる仕掛けとなっています。もちろん接着剤など化学物質は使用しておりません。
こだわりのキッチンスペース
「カフェの様に、お菓子を焼けて、ティーをして、雑誌を読みたい!」と奥様がこだわったキッチン回り。KOHLER(コーラー)の水洗、Harman(ハーマン)のガスコンベック、Le Cruuset(ル・クルーゼ)の鍋など、奥様のこだわりが一杯のL型対面のオーダーキッチンです!もちろんポイントは白いタイルの天板です。
断熱性能
豊かな庭を通して、自然の通風や採光を見直し、気持ち良く、開放的な空間にするのも大事なテーマでした。各窓の開口部jkを大きく確保する事で心配されるのは“寒さ”です。リフォーム前の断熱性能は決して高いものではなかったので、窓部をペアガラスを採用するなど、屋根裏・軒下、壁など全体的に断熱性能を高めました。エアコンは寝室の1台のみで快適に過ごせています。写真は冬場に暖気を循環させるのに活躍するシーリングファンです。
今回のリフォームでは、区の福祉機器類の補助金や、住宅改修の補助金をいただいています。
その他にも工夫したポイントは2つありました。
●自然素材である杉板をより安全なワックスで仕上げる為に、蜜ろうワックスを用いています。<br />これは、工務店に塗ってもらうとけっこうするものなので、施主自ら施工してもらうことで、20万ほど掛かる施工費をワックスをインターネットで購入するだけに抑えています。
●キッチンはリブコンテンツというキッチン制作会社に特注で作ってもらっていました。
工務店を通さずに、設計事務所が手配することで、工務店の中間経費を削減しています。<br />(設計事務所には連絡、図面修正、手配などの多少の経費を載せていただいています)
当初予算オーバーであった設計内容も、取捨選択と、上記のコスト面の工夫で、予算内に収めることができました。
現場には週に2日ほど行っておりました。新築であれば、規模からいえば、そんなに行く必要はないのかもしれませんが、とにかくリフォームに関しては、想定外の出来事が多いのです。
今回の現場に関して言えば、床の予想していたところに大引きがない、梁の接合部の位置が違うなど、現場からの連絡で、急きょ現場に出動したこともあります。
問題は、大工、現場監督、建築家とアイデアを出し合って施主の要望、コストを考慮し解決していきます。
時には施主を交えて、内容の確認をします。
だまって適当に納めてしまうような工務店や大工では、リフォームは難しく、それだけ経験と技術、柔軟性を持った工務店と仕事を進めるべきです。
この現場の場合では、写真の中にある丸太材の柱は当初の設計ではありませんでした。当初は柱3本の角材でした。
工事開始後、梁の接合部が予想と異なり、設計図からの修正を余儀なくされた折、大工が、自分の作業場内に使えなくて長いこと保管していた大きな床柱(和室などの床の間で使う柱)を無償提供してくれると提案をもらえました。
床柱としては、太すぎて一般の住宅では使えない(大豪邸の客間でしか使えない様な太さ)といい、その強い柱のおかげで、角材の3本の柱が1本の丸太になったのです。
もし、梁の問題がなく、すんなり設計図通りになっていたら、もっとごちゃごちゃしていたかもしれませんね。
建築家の声
「足の裏の地図」と呼んでいる視覚障害者への設計ですが、
実は空間の中で生活する、全ての人が、足の裏や、手や、目や耳で 建築を感じているはずです。
感覚に訴える空間、素材、環境の整備をこれからも提案していきたいと思います。
本多健建築設計室
住所:東京都中央区日本橋茅場町2-13-8 4F /埼玉県さいたま市大宮区三橋2-134-2
電話番号:03-5641-6455
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